マクロ的視点での労働力としてのシニア

統計的には、「生産年齢」は15歳~65歳未満とされています(これが「現役世代」)。今どきの人口構成や、定年延長の動きなどを考え併せれば、その括り方自体が疑問ですが、いったん、その状況を俯瞰してみましょう。

「平成30年版高齢社会白書」によれば、2017年10月1日現在の日本総人口は1億2,671万人で、そのうちに占める65歳以上人口は3,515万人で構成比は27.7%(これがいわゆる「高齢化率」)となっています。これに対して、いわゆる生産年齢人口は7,596万人で、構成比にして60%です。生産年齢人口は1995年に8,716万人でピークとなり、その後ずっと減少傾向にあります。

2017年10月1日現在の現役世代7,596万人に対して、65歳以上人口が3,515万人ですから、現役世代約2.1人で高齢者1人を支えるという計算になります。1950年当時は、この数が12.1人もあったことを考えると、現在の年金制度の危機的状況が理解できます。推計によれば、2065年には1.3人にまでおち込むとも言われています。

こうした状況に鑑みれば、よしんば全ての企業の定年が65歳にまで引き上げられたとしても、その年齢でリタイアメントして、“あとは悠々自適の生活”という高齢者は、本当に一部の方々だということになるでしょう。

一方で、75歳までを「現役世代」だと定義し直して、2017年10月1日現在の人口構成に当てはめると、75歳以上人口は1,748万人で、新たな現役世代(15歳~75歳未満)人口は9,363万人となりますので、約5.3人の現役世代が1人の高齢者を支えることになります。

そもそも、平均寿命が伸び続ける長寿国・日本において、65歳以上を非現役世代と括ること自体がどうかと思いますし、日本公庫総研の「働くシニア世代、支える中小企業」によれば、60歳以上の男女のうち、「75歳くらいまで(7.1%)」「80歳くらいまで(2.7%)」「働けるうちはいつまでも(28.9%)」働きたいと考える人の割合は38.7%もいます。さらに、「65歳くらいまで(16.6%)」と「70歳くらいまで(16.6%)」を加えると、実に、60歳以上の男女のうち71.9%の人が、“働きたい”と思っているのです。

もちろん、すべてのシニアに対して“75歳までは何が何でも働いてください”と言うつもりはありません。
あくまでも、ある年齢以上になったら、働くのか、働かないのかは、本人の自由意思で決めるべきだと思います。
でも、7割強の方々に“働く”意思があるのなら、ぜひ働いていただくことは、決して悪いことではないと思います。

労働力としてのシニアに、大きく期待することは、決していけないことではないのではないでしょうか。

“個人”の視点としての「働く」ということ

現在の日本の状況から見れば、75歳までは現役として活躍してもらう社会構造はとても大切なことだと考えますが、一方で“人生”の意味を考えた時には、そんなに働く必要はないのではないか、という意見も当然にあるものと思います。

「若いうちは、わき目も振らずに働く。だが定年を迎えたら、一切働かない」ということも、人生の選択としては、十分にアリです。

日本では近年「過労死」が問題になりますが、過労死の英訳は『Karoshi』なんだそうです。つまり、なんとなく「オーバーワーク・デッド」かな、と思いましたが、そうではない。なぜなら、欧米には、“死ぬまで働く”という概念がないのだそうです。ちょっとびっくりすると同時に、さもありなん、とも思いました。

生きるために働くのであって、働くことが原因で死んでしまうなんて、まさに本末転倒だということです。その通りだと思います。
そもそも大切なのは、「何のために働くのか」という、働く目的というか、意義をどう考えるか、だと思います。

生活費を稼ぐために働かなくちゃいけない、この仕事が面白いから働いている、体を動かすことが好きだ、人の役に立っていると思うることが生きがいになっている、などなど。
きっと様々な働く目的・意義があり、それは人それぞれに違っていて良いのだと思います。もっと言えば、働く目的・意義は、ライフステージによって変化していくこともあると思います。

例えば20代の頃は、買いたいもの・欲しいものがいろいろあって、それを手に入れるために働く。30代・40代になると、家庭を持ち、家族の暮らしを豊かにするために働くなど、おかれている立場や、守るべきものの有無、個人の人生観など、時の流れとともに変遷し、その変遷に伴って働く目的・意義も変わって良いのだと思うのです。

一度、それまで勤めていた会社などを定年退職したシニアが、改めて働くという場合には、その目的・意義は、ライトなもので良いと思います。もちろん、「年金だけでは食べていけないから、働かないといけない」という目的もあるかしもれません。しかしその場合でも、一定の年金があるのだから、不足分を補える程度に働けば良いわけで、過労死につながるような過酷な働き方をする必要はありません。

そして、できることならシニアの働き方としては、自らの“生”をより充実させることを目的・意義にしてほしいと思います。

お金を稼ぐことを主目的としない働き方は、実に多様です。
しかしながら、自分らしく、無理なく働くための働き口をどうやって探せば良いのか、十分な情報をもっていないシニアも少なくないに違いありません。

このコーナーで、シニアのための「就活・ボラ活」について、取り上げていきたいと思います。